お勧め1─震災復興と無形文化─現地からの報告と提言




被災した東北太平洋岸の人々が、伝統芸能の復活とともに復興する姿を紹介した阿部武司さんの報告に心打たれました。震災前から精力的に東北の民俗芸能を取材し、生活者であり、芸能者である人々の心を知る氏ならではの報告。

また、荒浜で職務質問を受けたというリアス・アーク美術館の川島秀一氏の「海と人間を分断しようとする動き」への疑問には、賛意を表するとともに、遺族らしい人々の海への供物を拒否したという公?の話には驚いた。


震災復興と無形文化―現地からの報告と提言」第6回無形民俗文化財研究協議会:平成23年12月16日(金) 10:30〜17:30 会場:東京国立博物館 平成館
・「東日本大震災を乗り越えて―沿岸部の民俗芸能 復興の現状」阿部 武司(東北文化財映像研究所 所長)
・「津波と無形文化」川島秀一(リアス・アーク美術館 副館長)
「被災集落と神社祭礼について」森幸彦(福島県立博物館南相馬市伊勢大御神社 禰宜
・「後方支援と三陸文化復興プロジェクト」小笠原晋(遠野文化研究センター 事務局長)
・「震災と文化復興」赤坂 憲雄(学習院大学教授、福島県立博物館 館長)
第二部 総合討議 15:30〜17:30         
〔コメンテーター〕
小川直之(國學院大学教授・石垣悟(文化庁伝統文化課調査官)
〔コーディネーター〕今石みぎわ(東京文化財研究所無形文化遺産部 研究員)
〔総合司会〕 宮田繁幸(東京文化財研究所無形文化遺産部 部長)

(森幸彦「被災集落と神社祭礼について」)
森幸彦:“人間が造ったものがこわれ流されている。縄文時代なら..”
    神社は、復興の拠りどころ、無形文化遺産と捉え支援できないか。
・川島氏のお話に出てきた山口弥一郎の『津浪と村』

津浪と村

津浪と村

山口弥一郎の三陸集落調査 - 三陸海岸の集落 災害と再生:1896, 1933, 1960



森幸彦:神様が海水を浴び活性化する「浜下り」神事は、復興にふさわしいものであるが、祭りができず、消滅の危機にある。
みんゆうNet / 福島遺産百選
地域崩壊で問われる「民俗」
小笠原:三陸文化復興プロジェクト献本プロジェクトの紹介。
http://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/35,18008,162,html
http://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/35,18903,162,html
   ・大震災の前から訓練していたのでスムーズに支援できた。。
   ・沿岸と内陸の郷土芸能の交流が進んでいる。
   ・大きな団体は支援を受けた。が声も上げれない状況の団体は、これから.
・震災前の沿岸は海が見えないほど建造物があったが、海が見える状態だ    ったら逃げれたのではないか。
赤塚憲雄:“地域の民俗芸能は新たな存在理由を問われている。”
赤塚さんは「若い写真家」宮古・釜石の写した鹿猟に注目する。その本を、書店で見て、東北特に都市部に住んでいる人間は、打ちのめされるような衝撃力を持つ写真集であった。

東北 (田附勝写真集)

東北 (田附勝写真集)

http://sankei.jp.msn.com/life/news/110818/bks11081808120000-n1.htm
http://d.hatena.ne.jp/photographica/20110817/1313600747

「船玉」 - Living, Loving, Thinking, Again


川島秀一:「地域に伝わるもの(歴史)を核にして復興すべきである。」
     「地元の人を組み込んで調査すべきである。」
阿部武司:(被災地に)“寄り添っていく”ことが大事である。論理ではない。
そして、ネットワークで気持ちを共有すると気軽に支援できるはず。
阿部さんが、その例として挙げた「とりら」の「とりら基金
本日の岩手日報「沿岸の民俗芸能支援」とりら編集長の奮戦を紹介、地道だが着実な現地掌握につながっている okuderazeki/ウェブリブログ
http://www.h3.dion.ne.jp/~iwagei/torira.htm
blogとりら
森 幸彦:福島では放射線量の規制のために身動きできない状態。もし、毛呂山    町(埼玉県)の浪江支援のようなものができないかなと思う。
    国を待っていると何もできない。
    神主は食べていけない状況で、祭りも成り立たなくなっている。
小川直行:地域の人が自ら発見する「地域文化財」、そのための「地域博物館」     文化を思想として根付かせるものが「地域文化財
赤坂:文化庁の「歴史文化基本構想」の被災地版は、できないものか。
  赤坂さんが関わる会津三島町の歴史文化基本構想
三島町歴史文化基本構想
石垣悟:一ついいモデルにはなると思うが...下地がないと..
川島秀一:「唐桑の漁師は、漁に出かけるとき、船に“おふなだまさま(船魂様)      、おはようござりす”とあいさつする。」
森幸彦:共同体が失われようとする時、それを守るのが無形文化ではないのか。
小笠原晋:(市民協働の姿として)市民団体が推選し、認定する「遠野遺産」制度が参考になる。
小川直之:国公立大に自然・文化遺産を活かす講座を開設すべし。
http://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/35,13258,162,html



(雄勝法印神楽団員は語った:「こどもたちは、この思い出を胸に、やがて帰ってくると願って、この演目をやりました」と。2008年 雄勝にて 藤田象観)
石垣悟:(お祭りのとき)地域に戻ってくると思わせるにはどうしたらよいか。
    地域の視点が大事。
小川直之:社会的共通資本の一つとして無形文化を。
fiduciary について-年頭のことば - 内田樹の研究室

社会的共通資本 (岩波新書)

社会的共通資本 (岩波新書)

赤坂:(今、チェルノブイリを読み続けている)「ウクライナでは、無形の文化を   掘り起こしている。汚染されてしまった土地では無形文化が拠りどころに   なるのではないか。
   “無形民俗は(震災後の)新しいアイデンディティの拠りどころ”
【録画配信】第6回無形民俗文化財研究協議会「震災復興と無形文化―現地からの報告と提言」: 民俗芸能STREAM]
※映像が不調の場合、この原HPよりご覧ください。

お勧め2─『現代思想11臨時増刊号 宮本常一

 佐野眞一氏が3.11以後、特に学ぶべき人として改めて巻頭を飾り、福田アジオ氏が柳田國男と対比して鮮やかに分析するも、宮本常一自身の言葉が光っている。
“..各地を歩いて、そしてそこで本当に百姓の人たちの働いているいそいそしい姿というのに頭がさがっておった。ところが同じ世界を経済学者たちが分析しますと階級闘争とかいろいろな形でとらえて、こういうふうに民衆というものはしいたげられているこういう言い方をするんですね。そういうしいたげられている方の生活の中に入ってみると、そういう人たちは自分たちがしいたげられているとも何とも思っていないで、力いっぱい生きているんです。そしてその生活を軽蔑しているか、というとそうでもない─やっぱりあるほこりを持っている”(「残酷ということ」『民話』18号 1960年)

●注目すべきブログ見つけました。
被災地の神社・寺院の状況