震災後の地域振興のためのジオパークは可能か


              湾口から中浜小学校を望む

河北新報6月24日「震災後の地域振興 津波湾をジオパークに」(東北大学名誉教授 谷口宏充氏)の投稿が気になり現地に行ってみました。
ジオパークとは | NPO法人 日本ジオパークネットワーク


中浜小学校(宮城県山元町坂元)は、海岸からとても近いところにありました。
その割には躯体が残っているのは、浜のラインに校舎が直交しているせいでしょうか。山元町は中浜小を震災遺構として保存する方向のようです。
山元町立中浜小学校 - saveMLAK

前には、被災車両が積み上がっていました。





迅速な校長の判断で90人の生徒が2階の屋根裏部屋に避難し、救われたことで有名になりました。津波の高さがかろうじてそこに及ばなかったためです。
3.11 東日本大震災 中浜小(毎日新聞)
震災を乗り越えて 中浜小学校
震災を乗り越えて 宮城県山元町中浜小学校
学校のまわりの浜側は水没しているところが多く、

隣地の墓地の墓石は、倒れたままでした。


グーグルアースに見る「津波湾」
谷口氏の投稿文によると、防潮堤を乗り越えた大波が、防潮堤を破損させ、その陸地側を掘り返しくぼみを残し、そこに海水が入り、その後の潮流や堆積の働き寄って形成されるという。これだけサイズが大きく形が明瞭なのはここだけで、世界的にも貴重なものとのこと。


U字形の「津波湾」ライン 近くだとかえって実感しにくい。右方では、瓦礫処理が進んでいる。


 (防潮堤決壊状況)

●被害状況・中浜小周辺
宮城県山元町・津波
ジオパーク津波
お知らせ・プレスリリース | NPO法人 日本ジオパークネットワーク
・いわて三陸ジオパーク構想
http://www.pref.iwate.jp/view.rbz?cd=35331
いわて三陸ジオパーク構想など
https://de.twitter.com/kiarohi47/status/212172643691003905

      (湾が最も入り込んでいるあたり 水が汚れてきている)

山元町の実情に疎いので、せっかちな判断は控えたいのですが、下記記事の谷口宏充氏のお話などを参考にすると、災害遺構としての中浜小の保存公開のみならず周辺の整備が必要であり、ジオパークの有効性は十分あるのではないか。
浜の現状は、近づくほど荒れているのが現実であり、ジオパークを前提にすれば今からそのことを想定した復興が必要であると思う。

津波以前より活性化したまちにするため
津波体験を被災の現物と環境によってしっかりと子々孫々に伝え、鎮魂をも併せ持つ地区にしてはどうかと考える。

震災復興とビジターズ産業
「◎基調講演/谷口宏充東北大名誉教授/地域振興ジオパークに期待
 「ジオ」とは地球や地球活動という意味で、「ジオパーク」は文字通り、地形や地質、地震津波などの地球活動による遺産を生かした自然公園をいう。世界遺産の「地質版」で、生態系を楽しむ大地のテーマパークだ。
 ユネスコ(国連教育科学文化機関)が関係するのは世界遺産と同じだが、保護、教育、ツーリズムのバランスや、地域振興につなげる活動を重視している。
 認定の流れは、地域で体制を整え、日本ジオパーク委員会に加盟する。その後、世界ジオパークネットワークに登録申請し、承認を受ける。現在、日本ジオパークは20地域が認定され、世界ジオパークは27カ国の87地域(国内5地域)が登録されている。

              (沈下した中浜一帯をジオパークにできないか)
 東北では、岩手県で行政を中心に「いわて三陸ジオパーク」の構想が進んでいる。栗原市岩手・宮城内陸地震で大崩落が起きた荒砥沢の地滑り跡などの活用を目指している。鍵を握るのは、地元自治体と住民の盛り上がりだ。
 ジオパークのメリットは、国内外の目を向けさせ、地域を活性化することができる。地元住民は地域を再発見するきっかけになり、ビジターを誘致することで経済的な活性化も生み出せる。
 東日本大震災からの復興は、いかにして地域振興に結び付けるかが重要。そのために有効なのが、教育と観光を中心とするジオパークだ。
 ジオパークは目的ではなく、あくまでも復興と振興の手段。一過性に終わらせず、継続するシステムをつくる必要がある。被災遺構に関しては鎮魂と、復興のための活用を対立させるのではなく、両立させるべきだ。
 宮城県沿岸部は北部がリアス式海岸で、松島湾周辺などは多島海エリア、南部は砂浜が続く。南三陸海岸はジオ(大地)、エコ(環境)、人(文化)というジオパークの構成要素が全てそろっている。
 南三陸海岸ジオパーク構想を進める上で、メーンテーマは「活動的な地球と人との共生」としたい。従来のジオパークのイメージを変え、ダイナミックに地球をとらえ直す。
 関心が冷めた後の効果的な集客、地域振興を計画しておくことが大事。見学施設などの拠点や散策ルートの開設はもちろん、教育活動を強化したい。今後、地震津波の災害が想定される地域の子どもや、防災関係者に焦点を当て、専門的な知識も備えた語り部の育成などが求められる。

                   (浜から見る 右端に中浜小学校)
<たにぐち・ひろみつ>東北大大学院理学研究科博士課程修了。大阪府教委科学教育センター研究員などを経て、97年東北大東北アジア研究センター教授。08年退職。南三陸海岸ジオパーク準備委員会の代表も務める。専門は火山学。福井県出身。67歳。」
被災地で動き出すジオパーク~いわて三陸のシンポジウムとサッパ船ツアー - いずじお Blog
一般財団法人国土技術研究センター
【被災・動画】


「この荒れ果てた郷土を、震災の大地の記憶をジオパークとしてよみがえらせる」ということか。
http://recorder311.smt.jp/movie/8736
糸魚川ユネスコ世界ジオパーク - 日本初の世界ジオパーク認定

◎そして中浜神楽
中浜神楽・宮城県山元町坂元地区/伝統芸能の継承に情熱(河北新報)

「災害遺構」の保存が論議になっていますが、被災者の思いを十分くみとった上で、
災害遺構のみではなく、周辺の環境を整備し、鎮魂の場としても機能する必要があると思います。
東日本大震災復興祈念公園(国土交通省)
さらに、大地に刻まれた痕跡・歴史と被災遺構、生き物、そして民俗芸能というばらばらに存在していたものが結ぶ時、震災被害を超える世界を創れるかもしれないと考えております。