「円仁の御首」について
円仁は864年に比叡山に葬られているので、山寺での「入定」自体は怪しいのであるが、その窟にあった天養元年(1144)如法経所碑には「慈覚大師の護持を仰いで...」とあり、さらに弘安三年(1280)、日蓮の弟子宛書状に「世間に云う。(慈覚大師)の御頸(御首)は出羽国立石寺にあり」とあり平安末には円仁が山寺に埋葬されていると信じられていたことは確かである。円仁の頭部を比叡山に留め、彫刻の頭部を弟子たちが平安期に立石寺まで運んだと理解されている(北畠教爾『図説山形県の歴史』など)。佐藤弘夫氏は肖像と体骨の窟への納入を平安後期の聖人信仰の高揚、とりわけ入定信仰の系譜に位置づけている。
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