東北中世考古学研究大会終了


12年間にわたり東北六県を一巡した研究大会が終了。この間に各県の研究者が成長し、一定の成果が産み出された。そしてネットワークが創られ、東北のみならず関東や西日本との比較が可能になったことが最大の成果といえるだろう。さらに文献史学など関連分野との学際・融合の進展により大きな成果が産み出されつつある。『中世奥羽の土器・陶磁器』やこの大会の日に刊行された『中世の聖地・霊場─在地霊場論の課題─』(高志書院)等がその具体的成果である。

中世奥羽の土器・陶磁器

中世奥羽の土器・陶磁器

高志書院HPhttp://www.koshi-s.jp/
今日の発表で印象に残った一つは川又氏の「霊場研究の方法」報告に対する佐藤弘夫先生のコメント(趣旨)
・(東北を含めた)東日本における中世の膨大な板碑の存在は、現代の「日本史」観をひっくり返す。
すなわち鎌倉時代後半以降は浄土信仰の時代として法然親鸞の念仏⇒極楽信仰が広まったと多くの人が思っているが、口称念仏とは全く違うタイプの浄土信仰が隆盛していたことを示している。

もう一つは「討論「東北中世考古学の展望と課題」」で文献史学の立場から柳原敏昭先生が禁欲的にもみえる考古学研究者の各発表に対してか「分析・類型化の結果の意味をきちっと提示し、東北の特質とその中の地域性の明らかにすること目標としてほしい」という重要な指摘であった。発掘調査の結果から先走ったイメージをすぐに示すことは誤った歴史像を作る危険性を持っているものの、まずは歴史学の目標をきちっと踏まえた発掘調査や各種調査が望まれると思う。
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