3.11死神.と青葉と天使


 毎朝、仙台を舞台にした連載小説、伊集院静氏の「青葉と天使」(河北新報)を読んで、ほんわかとした気分になり出勤する毎日。しかしもついにこの小説に「大津波」が来てしまい、今日の挿絵には心が動揺してしまった。
というのは、先日、読んだ『遺体』という本の凄惨な状況が、挿絵の中の流される人影に投影されてしまったようです。
..とすると本当に生き地獄を経験した人々は、この小説を目にした時、だいじょうぶなのでしょうか?
作家も挿絵の方も、恐らくこのことを承知の上で、覚悟を決めて書かれているのでしょう..

遺体―震災、津波の果てに

遺体―震災、津波の果てに

気持ちを切り替えるために読んだのが、加藤典洋氏の『3.11 死神に突き飛ばされる』でした。
大震災・大津波原発の現象の底にある大きな問題点を整理しています。氏は
【太陽光など持続的エネルギーの実現まで、原発を「つなぎ」とする】という主張なのですが「原爆投下の犠牲者と被爆者の祈念のかたち」を深く考えています。

                   (西公園「復興の杜」のゴジラ?12.3)
興味深かったのは、氏によって初めて実現した(核実験から生まれた)ゴジラ(1954年生)と(原子力をエネルギーとする)アトム(1951年生)の仮想対話。
・・しまいにゴジラはアトムに問う
“現実はことごとく君の言う「被爆した人たちの願い、祈り」を裏切っているではないか..核燃料サイクルは、軍事利用できるから「国策」なんじゃないかね。..安全対策の不備、秘密体質、経済的合理性の放棄など、山積する問題はすべて、この平和利用、軍事的利用の二股作戦から来ているのではないかね。それを君(アトム)はどう考えているのか。”と
ゴジラ - Wikipedia
鉄腕アトム - Wikipedia
3.11――死に神に突き飛ばされる

3.11――死に神に突き飛ばされる

大震災を契機に、加藤加藤典洋氏は、被爆者の祈りを裏切った日本の「病理」を鋭く突き、今後の日本の在り方【まず、(軍事的利用に関わる)核燃料サイクルを放棄し、「原子力の平和利用」を確立し、核兵器を否定する国として立国する】ことを提起しています。一読をお勧めします。
核燃料サイクルの問題点と日本の原子力政策(小出 裕章)
 ただし、震災後の生き方としては、自然の「荒ぶる力」と「恵み」と相渉り、自然から必要なもののみ摂取する日本人の古来からの生き方に、改めて学ぶ必要があると思います。
むしろ、「死神」は、強大なエネルギーを欲する人間の「むさぼり」や「怒り」や「無知」です。