「女人救済」経

仙台市宮城野区岩切の洞ノ口遺跡(どうのくちいせき)で多数の血盆経(けつぼんきょう)が出土しており、報告書(仙台市文化財調査報告書第281集)が刊行されたのを機に、この聞きなれぬ経について本などを集めて調べてみた。

室町時代から江戸時代の女性たちは死後に血の池地獄に落ちないためにわらにでもすがる気持ちで血盆経(中国の偽経 日本には15世紀に伝来)に救いを求めたであろう。それを広めたのも「熊野観心十界図」のように熊野比丘尼が絵解きをしながら全国を廻ったように女性も多かった。そして立山・恐山・湯殿山・山寺などでは血の池(血盆池)に見立てた池や川に血盆経が投ぜられた(高達奈緒美氏)。
http://www.lit.sugiyama-u.ac.jp/miyakawa/kumano/index.html
http://blog.goo.ne.jp/kitsunekonkon/e/cc34c9bc29508f8b2eaa13fc111c76fc
しかし、近年まで護符などの形で行われていたこの習俗は、女性特有の出血ゆえに地獄に落ちるということを前提にしており、現在に至るまで残る女性不浄観形成(成清弘和氏によればその原動力は家父長制の浸透という)に大きな影響を与えた差別的救済観であることはいうまでもない。なお、不思議なことにこのお経についてはこれだけの影響を与えたにも関わらず、日本史事典にはほとんど見受けられない(民俗学事典にはある)。
http://www.flet.keio.ac.jp/~shnomura/repo2001/koudate/youshi0122.htm
http://bunka.bird-mus.abiko.chiba.jp/siseki/kobetsu/ketubonnkyo.html

女性と穢れの歴史 (塙選書)

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