空海の誕生

空海(774-835年)は旧暦の6月15日が誕生日ともいわれている。1200年も前の平安時代後期の僧。日本のダヴィンチと云われるほどの天才というので真言宗のお坊さんの本をいくつか読んだが、真言宗にとってはえらい人としか分からなかった。一方、空海を迷信の権化みたいに言う人もいる。確かに末木文美士によれば空海のはじめた密教鎮護国家儀礼からやがて貴族の個人的な欲望の成就に用いられ(空海死後に天台宗円仁、円珍、安然が相次いで中国から持ち帰った密教の役割が大きいのだが)、生者の儀礼により死者の成仏を実現する葬式仏教の発想も即身成仏の卑近化の展開にある。また、同氏の『思想としての仏教入門』によれば、密教は仏教の異端ぎりぎりにあり、仏教の否定する欲望を肯定している。重要なのはその特性を生かして仏教を豊かなものにしてゆく可能性の指摘である。

日本宗教史 (岩波新書)

日本宗教史 (岩波新書)

思想としての仏教入門

思想としての仏教入門